The State of Composable Commerce Report™ 2021(コンポーザブルコマースに関するレポート)

 
Update: 2022.11.28 | Sutrix Solutions Japan
 
     

Composable Commerce(以下、コンポーザブルコマース)とは、ECに関連する様々なテクノロジーの中で、自社のビジネスや目指している顧客への価値提供にあった最も良いテクノロジーを選定し、組み合わせる事によって自社のECプラットフォームを構築する最先端のアプローチです。

コンポーザブルコマースとは何かはこちらを参照
https://sutrixsolutions.co.jp/contents/what_is_composable_commerce.html

2020年7月に米のリサーチ会社ガートナー社がコンポーザブルコマースについて世界に向けて発表してから、多くの企業に採用されている最先端のテクノロジーですが、1年を振り返って、コンポーザブルコマースの認知度や普及状況、採用のきっかけや期待、メリットなどを検証したのが本レポートです。

本レポートは、Elastic Path社とIgnite Research社とが連携し、次のような対象者にオンライン調査を実施しました。

<調査対象>
 ・デジタルチャネルを通じて販売している企業に勤務している方
 ・自社で利用しているコマースソリューションについてある程度認識をしている方
 ・組織内のECソリューションに関する意思決定者、インフルエンサー、または利用者

<調査期間>
 2021 年 5 月 5 日〜6 月 21 日

<回答者数>
 416 名。うち 298 名が全問回答

<目的>
 ・コンポーザブル コマースに対する現在の認識について理解すること
 ・コンポーザブル コマースを採用することで得られるメリットやその優先順位
 ・市場のニーズを満たすためにコンポーザブルコマースの機能をどのように進化させていく必要があるか
 ・今後1〜5年間のコンポーザブルコマースの役割や期待

 

コンポーザブルコマースの定義

まず、調査対象者にコンポーザブルコマースについての認知状況やどのように理解しているのかを確認しました。

コンポーザブルコマースの認知率については、79%もの方がコンポーザブルコマースを知っているという回答で、コンポーザブルコマースがすでに普及されている状態である事がわかりました。

また、コンポーザブル コマースを知らない人にどのように説明するか?という質問に対して、「ベストソリューション」、「モダン」、「様々なコンポーネントをまとめる」のような答えが挙がりました。

コンポーザブル コマースを認識している人の半数以上(56%)が、このアプローチには構成済みのソリューション(Pre-build Solution)、統合、リファレンスが含まれていると考えています。

構成済みのソリューションを、MACHアーキテクチャでつなぎ合わせることで、リスクや複雑さを回避し、必要な機能をより迅速に取り入れることができます。

コンポーザブルコマースにはモジュラーアーキテクチャが含まれると答えている回答者は52%に過ぎませんが、モジュラーアーキテクチャはコンポーザブルコマースの重要な原則であり、迅速な展開、市場投入時間の短縮、優れた顧客体験の実現が可能になります。
また、オープンエコシステムは、コンポーザブルコマースのもう1つの原則であり、最も良い「ベストオブブリード」コマースコンポーネント間の相互作用を可能にします。32%が「ベストオブブリード」、41%が「オープンエコシステム」と回答しています。

「コンポーザブルコマースとは」何か?についての回答:
・「コンポーザブルコマースとは、シングルベンダーに依存することではなく、ベンダーに関係なく最適なテクノロジーを使用すること」
・「ECチームが様々な最良のコマーステクノロジーを選択し、組み立てる権限を与えられた現代的なアプローチ」
・「一般的な、あるいは既成のものに合わせたり適応しようとするのではなく、自分自身の戦略を作ることができること」
・「一律的なアプローチではなく、コンポーザブルコマースは最新のテクノロジーを活用し、変化する市場に適応していくこと」

 

 

コンポーザブルコマースとMACHの比較

テクノロジーの領域は日々新しい用語が登場しより混迷を深めています。そこで、調査対象者にヘッドレス、MACH、コンポーザブルコマースについて明確に分類できるかを調査しました。

40%以上が、MACHは4つのキーワードの頭文字をとったものだと同意しました。

コンポーザブル コマースは、基礎となるテクノロジー以上の存在である、という意見については68%が同意しました。

上の図に示すように、ヘッドレスコマースはMACHの一部であり、MACHはコンポーザブルコマースの一部です。ヘッドレスコマースとは、フロントエンドがバックエンドから切り離されたシステムのことを指し、MACHとはマイクロサービス、APIファースト、クラウド、ヘッドレスの4つのコマーステクノロジーの頭文字をとったものです。

コンポーザブルコマースは、ビジネスチームとテクノロジーチームが、最も良いテクノロジーベンダーを活用し、目指すビジネスや顧客のニーズにあわせるためにソリューションをまとめ、デジタルコマース体験を最適化することであり、それぞれの企業やブランド独自のデジタル戦略やビジョンを実現するためのアプローチです。

 

コンポーザブルコマースの採用状況

コンポーザブルコマースについて、理解が進み、マインドシェアが高まっていますが、実際の採用の状況を見てみましょう。

コンポーザブルコマースについて知っている人の半数以上(58%)が、現在コンポーザブルコマースを採用しています。そのうちの95%がコンポーザブルコマースは将来のあるべき姿であり、71%がこのアプローチが技術とビジネスの両方にとって有益であることに同意しています。

現在コンポーザブルコマースを利用していない企業のうち、62%がこのアプローチについて調査中であり、29%が自社での採用を検討中であることがわかりました。導入に踏み切れない理由としては、22%はその他の優先事項があり、16%がコストやベネフィットであると言及しています。

また、導入後の成果について82%の企業が、3年後に総所有コスト(TOC)の削減が実現できると回答をしています。

 

コンポーザブルコマースの評価における要素

次は、EC事業者は現在および将来のECソリューションについてどのように考えているのでしょうか。EC事業者にとって最大の課題については、市場や消費者のニーズに迅速に対応することが最も多い(37%)回答で、他のツールとの統合(36%)と総所有コスト(TOC)の高さ(35%)が、上位3つの課題として挙げられています。

コマースソリューションを検討する際の最も重要な懸念については、総所有コスト(54%)、次いで使いやすさ(51%)、セキュリティ(44%)と、ビジネスに密接に関連しているものとなっています。これに対し、アーキテクチャに関する3つの選択肢が最も少ないというのは、特定のアーキテクチャに固執していないことを示唆しています。

EC事業者にとって、クイックスタート(28%)と完全なソリューション(28%)が最も重要であると評価されていますが、しかしコンポーザブルコマース導入状況によってこの回答は変化していきます。

コンポーザブルコマースを導入している企業にとって、クイックスタートとヘッドレステクノロジーが最も重要であり、コンポーザブルコマースを認識している企業にとっては、クイックスタートと完全なソリューションを最も重要であると評価しています。さらに、Eコマース事業者がコンポーザブルコマースソリューションを導入した場合、ソリューションの「すぐに使える」性質よりも、柔軟性などの機能的な利点がより重要になることを示唆しています。

コスト面については、82%の企業が導入して3年後に総所有コスト(TOC)の削減が実現できると回答をしています。62%が3年間で25%の削減、19%が50%の削減を見込んでおり、収益に大きな影響を与えることが期待されています。つまり、コンポーザブルコマースを導入する際に最優先したのはコストです。

 

コンポーザブルコマースの導入タイミング

まだ意思決定前の段階にある企業にとって、44%がコンポーザブルコマースは複雑すぎる、31%が実装が難しいと回答しましたが、実際コンポーザブルコマースソリューションを実装するには6ヶ月以内だけです。

コンポーザブルコマースソリューションを利用している企業は、39%が導入に3ヶ月未満、35%がが6ヶ月未満、17%が6ヶ月以上かかったと回答しています。

コンポーザブルコマースを採用している企業が、コンテンツ管理(40%)、注文管理(39%)、デジタルアセット管理(39%)、パーソナライゼーション(34%)、検索(32%)を最も多く採用しています。

コンポーザブルコマースの実装を経験したEC関係者は、自社のコマースソリューションにサードパーティーのテクノロジーを追加する場合、1ヶ月未満で完了すると回答しました。「市場や消費者のニーズに迅速に対応すること」がコンポーザブルコマースアプローチの戦略的優位性だと考えられます。

 

コンポーザブルコマースのメリットにおける認識と現実

コンポーザブルコマースを巡る様々な話題の中でメリットについて調査しました。
コンポーザブルコマースを知っているがまだ導入していない回答者のうち18%が、市場や消費者のニーズに迅速に対応することが最大のメリットであり、13%が総所有コスト(TOC)の削減を最大のメリットとして評価しています。

コンポーザブルコマースのアプローチを導入した回答者の大多数は、コマースエクスペリエンスを迅速に改善できることを確認しています。
前項で解説した通り、コンポーザブルコマース導入後の回答者は、サードパーティーのテクノロジーを追加するのに1カ月もかからず、近い将来に大きな総所有コスト(TOC)の削減がもたらされるとも回答しています。

コンポーザブルコマースを導入すると、あらゆる場面で使いやすさが向上するとのことで、他のツールとの統合(53%)と一貫したユーザー体験の提供(52%)、さらに50%がこのソリューションを加えることで高度に差別化されたデジタル体験を生み出すこと、複数のビジネスモデルをサポートすることがより簡単であると回答しています。

 

コンポーザブルコマースを導入した場合のメリットについて回答者は、効率の向上、コスト構造の改善、必要な変更をより容易に管理できることに注目しています。
 メリットについて、次のような回答です。
 ・「市場に公開するのがより早く、より効率的になった」
 ・「便利で、より効率的になった。」
 ・「スタッフの生産性が向上した」
 ・「社内でより多くの変更を管理できるようになった」
 ・「とても使いやすく、時間と労力を大幅に削減できた」
 ・「販売場所や方法に関係なく、すべての注文を1つのプラットフォームに集約することで、注文管理とフルフィルメントが効率化した」

 

将来のEC

回答者がほぼ一様に同意したことは、近い将来(今後2〜5年)の商取引はよりデジタル化が加速することでした。ある回答者は「現在デジタル化できないと考えられているプロセスをデジタル化する新しい手法が登場するだろう」とも述べています。

デジタル化を実現するには、ヘッドレスアーキテクチャ、デザインシステム、マルチテナントクラウド上の安全性の高いプラットフォームが必要です。
またこのようなプラットフォームは、カスタマイズを通じてより顧客体験の提供がしやすくなると同時に、エンタープライズソリューションの堅牢性と拡張性を備える必要があります。

   

回答者の大半は、ソリューションを導入済み、または導入の途中にあり、コンポーザブルコマースが現在のニーズと将来の需要の両方にどのように対応するかを理解しています。
コンポーザブルコマースについて知っているがまだ導入していない企業(73%)が、5年後にはそのほとんどの企業が導入しているであろう、と考えているようです。

コンポーザブルコマースの戦略的価値を実現する上で、最後の障壁となる誤解を克服するためには、この調査から得られたようなデータを意思決定者に提供することが、本格的な採用の鍵となります。

 

「The State of Composable Commerce Report™ 2021」(Elastic Path Software Inc) をもとに翻訳して作成

 

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